犬神家の一族

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犬神家の一族
犬神家の一族

犬神家の一族』(いぬがみけのいちぞく)は、推理小説家横溝正史の執筆した長編推理小説

横溝作品としては『八つ墓村』に次いで映像化回数が2番目に多い作品で、2006年12月公開作品を含め映画が3本、テレビドラマが5作品公開されており、特に市川崑監督による1976年公開の映画版は、メディアによって「日本映画の金字塔」と称されることもある。

概要と解説[編集]

雑誌『キング』に1950年1月号から1951年5月号まで掲載された作品。『獄門島』のように殺人に一つひとつ意味を付会させて欲しいとの編集サイドからの注文に応じ、さらに掲載誌が大衆雑誌であることから派手にいった方が良いと作者自身が判断し、連載1回目から殺人を発生させた。この1回目を激賞した編集長から作品を3年続けて欲しいと要望されたが、それだけの大長編を書く準備がなかったため、1年と限らず好きなだけ連載させてくださいといって続けることとなった。

当初は通俗長編であるとして、権田萬治による『日本探偵作家論』(1975年)などに見られるように専門家の評価は低かったが、大衆誌に連載されたこともあって一般人気は高く、たびたび映像化されていることから横溝作品の中でもトップクラスの知名度を誇る。また、当初は欠点とされていた犯人とトリック全体の関連性なども、むしろ時代の先取りとして評価する声も少なくない。田中潤司は「金田一もの」のベスト5を選出し、その中で本作を『獄門島』『本陣殺人事件』に次いで第3位に挙げている。後年、作品中の犯人の「無作為の作為」が評価されるようになった。「東西ミステリーベスト100」(『週刊文春』)2012年版で、本作品は39位に選出されている。

あらすじ[編集]

犬神家の一族

昭和2x年2月、那須湖畔の本宅で信州財界の大物・犬神佐兵衛(いぬがみさへえ)が莫大な遺産を残してこの世を去った。佐兵衛は生涯に渡って正妻を持たず、それぞれ母親の違う娘が3人いたが、彼女たちは皆、遺言状のことばかりを気にしていた。唯一、佐兵衛の死を悼んでいたのは、彼の恩人野々宮大弐(ののみやだいに)の孫娘で佐兵衛もかわいがっていた珠世(たまよ)であった。

同年10月、金田一耕助は、犬神家の本宅のある那須湖畔を訪れた。犬神家の顧問弁護士を務める古館恭三の法律事務所に勤務する若林豊一郎から「近頃、犬神家に容易ならざる事態が起こりそうなので調査して欲しい」との手紙を受け取ったためであった。どうやら若林は佐兵衛の遺言状を盗み見てしまったらしい。しかし耕助と会う直前、若林は何者かによって毒殺されてしまう。

そんな中、佐兵衛の遺言状は古館弁護士によって耕助の立ち会いのもと公開されるが、その内容は

「相続権を示す犬神家の家宝“斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)”の三つを野々宮珠世に与え、遺産は珠世が佐清(すけきよ・長女松子の息子)、佐武(すけたけ・次女竹子の息子)、佐智(すけとも・三女梅子の息子)の3人の中から婿に選んだ者に与える」

という相続争いに拍車をかけるようなものであった。3姉妹の仲は険悪となり、やがて佐武が惨殺され、直前に佐武と会っていた珠世に容疑が向けられることとなる。

事件の発生年について[編集]

原作では事件の起きた年を「昭和2×年」とぼかしているが、原作中に登場する人物の年齢が昭和24年(1949年)を基準に設定されていることから、下に示すように事件発生年は昭和24年と推定出来る。

  • 野々宮珠世は大正13年(1924年)生まれで事件当時は26歳。
  • 犬神佐清は奉納手形に「昭和18年 23歳、酉年の男」と書き記しており、事件当時は29歳。
  • 犬神佐兵衛は17歳のときに野々宮大弐に保護され、事件が起きる半年前の2月に81歳で死去している。これだけでは年代を特定できないが、出会ったときに42歳であった野々宮大弐が、明治44年に68歳で死去しているので、佐兵衛と大弐の邂逅は明治18年だったことがわかる。つまり、佐兵衛が81歳で死亡したのは昭和24年となる。
  • 注:登場人物の年齢は数え年である。

なお、作中でも説明されているが、「斧琴菊」とは代々の尾上菊五郎が使用している役者文様に由来する。「良き事聞く」に男性的な斧と女性的な琴、そして菊五郎の菊をかけたこの図案を特に好んで使い始めたのは三代目尾上菊五郎だが、その曾孫にあたる六代目尾上菊五郎が死去したのも昭和24年のことだった。

一方、1976年の映画では冒頭に「昭和22年(1947年)」とテロップが入る。またこれ以降の「横溝正史シリーズ・犬神家の一族」(1977年)、「金田一耕助シリーズ5・犬神家の一族」(1994年)、「プレミアムステージ・犬神家の一族」(2004年)、そして1976年版のリメイクである映画「犬神家の一族」(2006年)は、すべて昭和22年との設定を踏襲している。

登場人物[編集]

金田一 耕助(きんだいち こうすけ)
飄々とした私立探偵
野々宮 珠世(ののみや たまよ)
犬神佐兵衛の恩人・野々宮大弐の孫。絶世の美女。
20歳前に両親を相次いで亡くし、大弐を恩人と慕う佐兵衛によって犬神家に引き取られた。何者かが仕掛けた罠に3度も掛かるが、危機一髪で助かった。後に公開された佐兵衛の遺言によって、自分が犬神家の遺産相続の鍵を握っていたことを知らされる。

犬神家[編集]

犬神 佐兵衛(いぬがみ さへえ)
犬神財閥の創始者。彼の残した遺言状が惨劇の始まり。放浪の孤児だった佐兵衛は信州那須神社神官野々宮大弐に拾われ養育された。生涯正妻を娶らず、娘の松子、竹子、梅子はそれぞれ違う女との間に生ませた子である。
犬神 松子(いぬがみ まつこ)
佐兵衛の長女。夫とは既に死別している。いつも凛とした佇まいをしている。佐清を溺愛している。
犬神 佐清(いぬがみ すけきよ)
松子の一人息子。ビルマ戦線で顔に火傷を負い、白いマスクを被った姿で復員
その異様な外見から、映像化作品ではビジュアルが象徴的に用いられることが多い。
犬神 竹子(いぬがみ たけこ)
佐兵衛の次女。小山のような体型。直情的な性格である。反松子。
犬神 寅之助(いぬがみ とらのすけ)
竹子の夫。犬神製糸東京支店長。
犬神 佐武(いぬがみ すけたけ)
竹子の息子。両親似で衝立のような体形。
犬神 小夜子(いぬがみ さよこ)
竹子の娘。珠世ほどではないが美人。気が強い。
犬神 梅子(いぬがみ うめこ)
佐兵衛の三女。三姉妹の中では、一番美人。末娘のためか、姉達に対する反感が強い。
反松子、反竹子だが、竹子と結託して松子を責める。
犬神 幸吉(いぬがみ こうきち)
梅子の夫。犬神製糸神戸支店長。
犬神 佐智(いぬがみ すけとも)
梅子の息子。よく動く目が、狡猾な両親に似ている。

系譜[編集]

  • 犬神氏
          某
          ┃
          ┣━━━━犬神佐清
          ┃
       ┏犬神松子
       ┃
       ┃ 寅之助
       ┃  ┃
       ┃  ┣━━━┳犬神佐武
       ┃  ┃   ┃
犬神佐兵衛━ ╋犬神竹子  ┗犬神小夜子
   ┃   ┃
   ┃   ┃ 幸吉
   ┃   ┃  ┃
   ┃   ┃  ┣━━━━犬神佐智
   ┃   ┃  ┃
   ┃   ┗犬神梅子
   ┣━━━━━━━━━━━青沼静馬
   ┃
 青沼菊乃

野々宮大弐
   ┣………野々宮祝子━━野々宮珠世
   晴世

関係者[編集]

古館 恭三(ふるだて きょうぞう)
弁護士。古館法律事務所所長。犬神家の顧問弁護士。佐兵衛より、遺言状の管理を任されていた。殺された若林豊一郎に代わり、金田一耕助に調査を依頼する。やがて金田一耕助に親愛の情を抱くようになる。
若林 豊一郎(わかばやし とよいちろう)
古館法律事務所に勤務。犬神家の遺産相続問題に関して金田一に捜査依頼をするが、金田一と会う前に毒殺された。
猿蔵(さるぞう)
珠世の世話役の下男。もとはみなしごだったため、子供の頃から祝子によって珠世と共に育てられ、珠世が犬神家に引き取られると、下男として犬神家に入った(映画では、佐兵衛が事件の10年ほど前に“どこかから連れてきた”という設定になっている)。珠世に非常に忠実で、生前の佐兵衛から“命に代えても珠世を守れ”と命じられているため、珠世の身辺の世話だけでなく護衛も務め、作中でたびたび珠世を助ける。「猿蔵」というのは本名ではなく、猿に似ていることから付けられた通称で、本名は不明。粗野かつ無口で少し思慮が足りないが、力が強く、佐武や佐智も持て余している。
宮川 香琴(みやがわ こうきん)
松子のの師匠。目が不自由。
野々宮 大弐(ののみや だいに)
那須神社の神官。珠世の祖父。故人。犬神佐兵衛の恩人。
野々宮 晴世(ののみや はるよ)
大弐の妻。珠世の祖母。故人。
野々宮 祝子(ののみや のりこ)
野々宮夫妻の娘で、珠世の実母。故人。
青沼 菊乃(あおぬま きくの)
佐兵衛のかつての愛人。消息不明。
青沼 静馬(あおぬま しずま)
菊乃と佐兵衛の息子。母同様消息不明とされている。養子に出されており、本名は津田静馬。年齢は佐清と同じ。

メディア[編集]

市川崑監督・石坂浩二主演による1976年版は、1980年代にかけて一世を風靡することになる角川春樹事務所の第1回映像作品であり、金田一耕助を初めて原作どおりの着物姿で登場させたことでも知られる。大野雄二による主題曲「愛のバラード」も有名で、横溝本人もゲスト出演(民宿・那須ホテルの主人役)している。

この映画は後々の演出家にも影響を与えたとされる。2004年春にフジテレビ稲垣吾郎主演で製作したテレビドラマ版では、岸田今日子が同じ役で出演している。2006年公開の映画版は、市川監督・石坂主演によって30年ぶりにリメイクされたものである。

テレビドラマ版において金田一耕助を最も多く演じている古谷一行が初めて金田一役を演じたのも本作であり、初放映時の最高視聴率は40%を超えた。

映像作品での「波立つ水面から突き出た足」のシーンが有名であるが、そもそも原作では季節が初冬であり、夜中に湖に投げ込んだ死体が朝になって湖面が氷結したために逆さに突き刺さった形になったというものである。実際には映像作品のようなことは起こり得ないが、1976年版の映画では撮影時期の都合もあり「波立つ水面から突き出た足」の描写がされた。この映画が大ヒットしてこの場面が印象付けられてしまったことから、後の映像作品でも同様の描写になっている。なお、同映画では寺田稔(猿蔵役)のスタントを務めた青木湖畔の旅館の主人が逆さ死体を演じている。

映画[編集]

テレビドラマ[編集]

火曜日の女・蒼いけものたち (1970年8月25日 - 9月29日日本テレビ
※金田一は登場しない。
※時代を現代(1970年当時)に設定している。
※登場人物はすべて原作と名前が変わっている。
横溝正史シリーズ・犬神家の一族 (1977年4月2日 - 4月30日毎日放送
横溝正史傑作サスペンス・犬神家の一族 (1990年3月27日テレビ朝日
※本作の金田一は、白いスーツにハンチング帽、丸メガネという出で立ちで、池田明子という“助手”を連れている。
金田一耕助シリーズ5・犬神家の一族 (1994年10月7日フジテレビ
※松子、竹子、梅子は犬神佐兵衛の愛人で、「犬神」姓を名乗れない設定。
※古館は古館「恭三」弁護士の息子という設定。
プレミアムステージ・犬神家の一族2004年4月3日、フジテレビ)
※冒頭で『誰も知らない金田一耕助』というドラマオリジナルによる金田一のアメリカ時代のエピソードが描かれた。
※三田佳子扮する松子の髪型は原作小説の表紙絵の髪型を忠実に再現したものとなっている。
※岸田今日子は映画版にも香琴役で出演している。
※青沼菊乃は既に死亡しており、青沼菊乃=宮川香琴という設定はない。
※「斧」による殺害方法は、映像作品の中では最も原作に忠実である。

漫画[編集]

  • 犬神家の一族 (作画:つのだじろう講談社漫画文庫)
    • 復員兵という佐清の設定を、火事で火傷を追ったという設定に変更して、現代劇にアレンジしている。また、犬神家が狼を祀る奇怪な宗教を統べる一族であるという、伝奇ホラー風味の味付けがなされている。金田一は洋装でメガネをかけた若干ひょうきんなキャラクターとされているほか、佐清がジーンズ姿であるなど、映画版とはビジュアルイメージが重複しないようにオリジナリティを追求している。
  • 犬神家の一族 (作画:いけうち誠一、講談社コミックブックシリーズ)
  • 犬神家の一族 (作画:JET角川書店あすかコミックスDX)
  • 犬神家の一族 (作画:長尾文子秋田書店サスペリアミステリーコミックス)
  • 犬神家の一族 (作画:小山田いくぶんか社『ホラー・ミステリー』掲載、単行本未刊)

ゲーム[編集]

関連イベント[編集]

関連項目[編集]

  • 金田一耕助
  • 金田一少年の事件簿』 - 耕助の孫という設定の金田一一がファイル9「飛騨からくり屋敷殺人事件」で同様に資産家の遺産相続に端を発する事件に挑む。
  • にしおかすみこ - "犬神家"という名の三点倒立の応用技を持っている(その姿が見られるシーンのパロディが多数ある)。
  • 木曜ドラマ トリック』 - エピソード4「死を呼ぶ駄洒落唄」の舞台に登場する池「臼池」に、足だけ突き出た死体をパロディにしたモニュメントが登場。同シリーズでは横溝作品をネタにしたパロディが多く登場している。
  • クレヨンしんちゃん』 - 全裸で脱衣かごの衣類に頭だけを突っ込んで逆さまになるという佐清の死に様のパロディとして、「犬神家の一族ごっこ」なる遊びが登場する。作中では「ママとのお約束条項第62条」としてこれを禁止されている(ただし漫画版のみ。アニメ版での第62条は「けつだけ星人の禁止」となっている)。何話かエピソードの頭に黒一面に白大文字という市川版オープニングのパロディがある。曲は同じ大野雄二の曲である。アニメ外伝『トレジャーハンターみさえ』ではオマージュの「酢乙女家の一族」が作られている。
  • 新世紀エヴァンゲリオン』 - 上記に同じく佐清の死に様のパロディとして、第九話「瞬間、心、重ねて」にて、エヴァンゲリオン初号機・弐号機が第7使徒イスラフェルとの戦いで活動停止になった際に水もしくは地面に頭から埋まって足だけが見えている。
  • らき☆すた』 - アニメ版第6話で、白いマスクをかぶり「佐清です」、布団から足だけ出して「犬神家」、などのネタを泉こなたが披露。
  • 20世紀少年』 - 登場人物の1人であるサダキヨ(佐田清志)の命名の由来が佐清である。
  • ヒーロー戦記 プロジェクトオリュンポス』 - 異次元人ヤプールが「ふたがみすけきよ」という人物に化けてモロボシ・ダン東光太郎を罠にかけるシナリオがある。
  • 『ヨキ、コト、キク。』 - こげどんぼの「小春こころ」名義で連載されたブラック・コメディ漫画作品。昭和12年頃、一代で猫神家の財を成した猫神サヘイの死後、三つ子の兄妹の良子(ヨキコ)・琴助(コトスケ)・菊乃(キクノ)と日中戦争満州に派兵されている長男・スケキヨの婚約者・タマヨの4人のいずれかに財産を相続させるという遺言状が公表され、以後お人よしのタマヨを除く3人がそれぞれの野望のために他の3人を亡き者にしようと画策する。スケキヨはシャア・アズナブルのコスチュームを模した軍服姿で登場する。探偵を趣味とする銀田一コースケや、小夜子や連太郎、文彦など横溝作品の登場人物と同名のクラスメイトのほか、猫神家の家宝「斧琴菊一號(ヨキコトキクイチゴウ)」を狙う怪盗レッドなども登場する。
  • リーガル・ハイ』 - 第7話が『犬神家の一族』のパロディーになっている。古美門研介の金田一ファッションや、田舎を舞台にした「三兄弟+他人」を巡る遺産相続問題など。
  • シティボーイズライブ 2000年公演ウルトラシオシオハイミナール』 - コントの一つに孤島を訪ねた風体が金田一に似た男(きたろう)がスナックのママに扮した客演の野宮真貴に「タマヨさ~ん!」と走りより抱きつくシーンがある。BGMは市川版の大野雄二のものが使用されていた。また同ライブの別コントで湖面から出た下半身を模した”佐清セット”(実は佐清の足ではないが)なるものが登場する。

スプラッターハウス わんぱくグラフティ 背景に水死体があるステージがある いいとも。火曜日の家族当てクイズでBGM使用している。

外部リンク[編集]