IT土方

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IT土方
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IT土方(アイティどかた)とは、システムエンジニアプログラマなど情報技術産業で働く労働者の俗称。コンピュータ土木作業員(コンピュータどぼくさぎょういん)、システム屋(システムや)とも呼ばれる。

概要

パソコンや各種情報端末を駆使するIT産業は、現代の花形産業というマスコミが作り出した華やかなイメージやその求められる専門技術の高さとは裏腹に、実際の労働は地味で単調で長時間に及ぶため厳しい労働環境となるケースが多い。また、元請企業であるゼネコンが下請企業を支配し仕事を丸投げするという、建設土木業界によく似た多層式の産業構造になっており、実際の現場における末端の従業員に対しては専門職の技術者という意識は乏しく、単なる作業要員という扱いがされているほか、多重派遣偽装請負が頻繁に行われており、この様な構造によりIT業界そのものが維持され、その利益が上へ上へと吸い上げられ、収入増やキャリアアップの機会も無い末端の従業員は次々と使い捨て同然に消費され、人材の入れ替わりが激しいのが実態である。

このことから、IT業界のヒエラルキーの最下層で働く労働者が、割に合わない低賃金の上に不安定な雇用環境の労働現場で厳しい労働実態を強いられている自らを卑下して表現する形で、やはり建設・土木業界の最下層で厳しく不安定な労働条件の下に働かされている土方(土木作業員)にたとえ、デジタル土方IT土方あるいはコンピュータ土木作業員などという表現がなされるようになった。

また、人月計算と呼ばれる日数と必要人数の掛け算という単純な計算によるシステム発注の金額の設定方法も土木作業員と同様の待遇といわれるゆえんである。

IT系人材派遣会社・関連メーカーの存在

IT産業の元請企業が下請企業に仕事を丸投げしたり、元請け自身が非正規雇用を雇用するにしても過酷な労働条件で末端の従業員を消耗品同然に使い潰して行く搾取型のビジネスモデルの構造はたびたび批判されるが、現代日本においてそういったいびつな産業構造はIT産業が唯一の例外というわけではない。たとえばIT産業にとっても不可欠なツールであるパーソナルコンピュータ通信販売ショップブランドパソコンへのOEM供給を主業とする“直販メーカー”でも同様の状況はいくらでも見られる。これら業界では製品組立ライン従事以外にもサポート業務のとりわけ特にクレーム処理は非正規雇用派遣社員に依存しているが、一般的にこのような業務に従事する者に対しては長期間雇用を前提としない低水準の従業員教育が行われ、スキルアップやキャリアアップの機会も事実上ない。また、そのような実情を知らずに劣悪な環境に飛び込んだ者は「非正規労働者が短期間で次々に使い潰されても会社は何事もなく回る」「消えた者の替わりがいくらでも入ってくる」という現実を目の当たりにしながら、結局のところ短期間での使い捨てを前提とした会社組織の最下層で低賃金と過酷な労働に苦しめられる。この様な業界で従業員が置かれている搾取型の使役環境の過酷さは、IT業界のそれとさしたる違いがない。

しかし、とりわけIT産業が厳しい批判に晒され続けている理由は、ITバブル(過剰なIT投資ブーム)の時期から台頭してきたIT系人材派遣会社の実態にある。IT系人材派遣会社の多くは表向きは上流のSI企業を自称しているが、実態は未経験者歓迎を謳い文句に多くの人材を安価に調達し、さらに上流のSI企業に提供する人材派遣業者に過ぎない。IT系人材派遣会社に入る者の大半はSI企業で働くことによるスキルアップとキャリアアップの機会を期待するが、実際任される仕事の大半は専門性を必要としない長時間のテスト作業であったり、トラブル対応・クレーム処理など、誰もが嫌がる忍耐が必要な仕事で、24時間サービスなどを請け負っている企業の場合には勤務シフトが夜勤中心ということになる場合もある。またSE未経験者の多くは研修という名目でサービス残業を強要されるケースも多く、労働者派遣としての適正な管理がなされていない偽装請負であるケースも後を絶たない。このような人材派遣会社が乱立跋扈してきたIT業界は現代の搾取型のビジネスモデルによって成り立っている業種の象徴的存在とされ、ITバブルの時代から数多くの批判に晒されてきた。

より高い信用力と技術力が求められるため一定の企業規模を必要とする上流SIに比べ、小規模組織でも参入が容易でリスクが低く確実なリターンが得られたIT系人材派遣会社は全国各地で乱立し、営業拠点が作られていった。現在のIT系人材派遣会社の多くは、有効求人倍率が低く就職氷河期の渦中であった1998年から2000年に起こったITバブルの波に乗り急成長を遂げたものや、それらからスピンアウトして立ち上げられたものである。また、請け負う仕事の量に応じて事業者間で人材を融通しあうことから、元請企業へ人材が届くまでに5つ以上の会社を経由することは今でも珍しくない。ITバブル崩壊以後は業績悪化を理由に上場企業を中心にM&Aがさかんに行われるも、IT系人材派遣会社の多くは中小のワンマン企業で、乱立した企業群が人材を安価で提供し大量消費財の如く浪費するだけの搾取型ビジネスは今でも根強く残っている。

独立系システムインテグレータ

デジタル土方という言葉の流行は独立系システムインテグレータに起因する。独立系システムインテグレーターの労働環境は下層になるほど劣悪であり、従業員は奴隷のごとく働かされる。独立系以外にはメーカー系、ユーザー系などがある。

  • メーカー系 電機メーカーなどの子会社を指す、福利は親会社に準ずることが多く、本社のソフトウェア関連の仕事を受け持つことが多い。
  • ユーザー系 金融流通インフラストラクチャー総合商社などのITと関係のない子会社か資本関係をもつ会社、親会社の仕事が多く福利も親会社に準ずることが多く、親会社のシステム部門が独立したものが多い。
  • 独立系 親会社を持たない企業を指す。「一定の知名度と信頼があり顧客から直接業務を受注できる」「独自の人気コンテンツやソフトウェアがある」「組込みソフトウェア回路設計など高度な技術を持っている」などで、安定した収入源を持っている企業もあるが、これらがない場合は他の企業からのIT関連業務を格安で請け負う下請業者や人材派遣会社でしかない。このことが収益の悪化と社員への待遇の悪化へ繋がっている。

新3K職場

労働環境の劣悪さ揶揄する言葉として、従来のブルーカラーの労働環境を表す「きつい、汚い、危険」の3Kになぞらえ、新3Kあるいはニュー3Kというものがある。2007年には、NTTデータの代表取締役である浜口友一が決算発表でこの言葉を例えに挙げて業界を憂えたと報道された。

新3Kの中身は諸説あるが2007年に開かれた情報処理推進機構によるITフォーラムでは、学生がIT業界に対して持つイメージとして「きつい、帰れない、給料が安い、休暇取れない、結婚できない、子供作れない」などの他に、多くのネガティブイメージの存在が明らかにされた。

一方、情報処理推進機構理事として2000年代に日本のIT国家戦略の支援に携わってきた藤原武平太は、企業新卒採用の課題を複数回答でまとめた表(第一位は、46.5%、業界の仕事のイメージが良くない)を踏まえて、「3K、5K、7K、10Kなど私自身は根拠がないと思っていることが、面白おかしく伝わっている。――略――。私は由々しき事態と思っている」と述べている。

また、このような労働環境が知れ渡るにつれ、秒速5センチメートルで組み込みプログラマとしての生活が過去の華やかな青春との対比に使われるなど、過去の先進的なイメージからは遠ざかっている。

女性SE、過酷勤務で死亡(2007年)

情報処理システム会社の福岡事業所に勤務していた福岡市のシステムエンジニアの女性(当時31歳)が急死したのは過酷な労働が原因として、両親が同社合併後にできた「アドバンストラフィックシステムズ」(本社・東京)に対し、慰謝料など計約8200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2012年10月11日、福岡地裁であった。

府内覚裁判官は「死亡と会社の業務との間には因果関係がある」として、同社に計約6800万円の支払いを命じた。

判決によると、女性はシステム移行などを担当し、2007年2月の時間外労働が約127時間に上った。3月に仕事上のミスなどが原因で自殺未遂し、約1か月間休養した。その後復職したが、深夜残業など過酷な勤務が続き、5日後、東京出張中に致死性不整脈で死亡。福岡中央労基署は2009年、労災認定した。

同社側は「亡くなる直前に約1か月の連続休暇を取得しており、死亡と業務に因果関係はない」などと主張した。しかし、府内裁判官は「特に自殺未遂前の時間外労働時間は長く、脳・心疾患の発症をもたらす過重なもので、会社は休暇を取らせるなど具体的な措置をとっていなかった」と述べた。

現役ブラック企業社長が、社員を安くこき使う華麗な手口を暴露

給与、勤務時間、休日など労働条件が労働法に違反している、もしくはその企業が行っている事業そのものがなんらかの法令に違反しているなど、決して他人に入社を勧められない企業のことを「ブラック企業」という。そんなブラック企業の実態に迫ってみた。

入社して、この会社おかしいと思ったなら?

どのような会社でも、入社前、外からでは、その内情をうかがい知ることはできない。では、もしブラック企業に入社してしまった場合は、どうすればいいのだろうか。できるだけ早く、まっとうな企業に転職するしかないだろう。決して我慢して長く勤めようと考えてはいけない。

なぜなら、そもそもブラック企業の経営者は、社員の人生を背負っているという発想がないのだ。労働の対価である給与もできるだけ安く抑え、なんだかんだ理由をつけて、踏み倒すことさえ厭わない。

事実、従業員30名程度を擁するあるIT企業経営者のA氏は、自らをブラック企業経営者と認めたうえで、「従業員は敵だと思っている。いかに安くこき使い。文句を言わせず、上手に辞めさせるかだ」と言い切る。従業員サイドに立ってみれば、こんな企業に長居し、忠誠を誓ったところで人生を空費するだけだ。

A氏は採用時、労働時間、待遇などに文句を言わず、黙々と働きそうな「使い勝手のいい人材」のみを採用するという。A氏に詳しく話を聞いてみた。

使い勝手のいい人間を採用して、こき使う

「使い勝手のいい人材」の基準というか、見分け方は?

A氏「人の上に立とうとか、そういう野心がない人間。人に使われるしか能のない人間だ。学歴はあまり関係ない。真面目で、人を疑うことを知らず、そこそこ育ちがよくて、素直に人の言うことを聞く、それでいて責任感が強いかどうかだ。」

御社における社員の待遇は? 給与や、勤務時間、休日などを教えてください。

A氏「給与は月に13万5000円。残業代はない。勤務時間は一応、朝9時から夕方5時まで。昼休みも1時間ある。しかし社員はみんな、自発的に朝は8時には会社に来ている。夜も自発的に終電に乗れるまでは働いている。泊まり込みも自発的に行ってくれている。月2回は土曜日も出勤。そうしないと仕事が回らないからね。」

本当に、それだけの勤務時間を要するほどの仕事があるんですか?

A氏「ない。意図的に「仕事のための仕事」をつくって、長時間働かせているだけだ。」

なぜ、そのようなことを?

A氏「長時間働かせ、ピリピリした社内の空気に長く触れさせることで、余計なことを考えさせないようにするためだ。今の言葉でいえば「社畜」というのかな。そうすることが目的だな。」

それにしても、条件面ではかなり厳しいですよ。社員の方は文句を言わないですか?

A氏「文句を言うような人間は採用していない。文句や不満を言わせないよう、社内の雰囲気を日頃からつくっている。また最初にガツンとやっているので、社員から不満だの文句だの出ない。」

最初にガツンとやるとは、どういうことをやるのですか?

A氏「仕事でミスがなくても、些細なことで厳しく叱責する。そしてそれをしばらく続け「このような仕事ぶりでは給与は払えない」と言う。「お前はこんなにミスが多いが、それでも給料を払ってやってる」と刷り込む。つまり経営者である私を怖いと思わせることだね。」

ミスは徹底的に責めるというわけですね?

A氏「ミスに限らない。勤務時間中の私用メールや電話、新聞など読んでいても「私用」としてどやしあげる。これで社員へのにらみは利く。もっとも、褒めるときには褒める。「アメとムチの使い分け」も重要だ。」

劣悪な環境に慣れさせて、たまに優しくする

このIT企業経営者がいう「アメとムチ」は、劣悪な環境、雰囲気に慣れさせ、たまに優しくすることで、社員の喜びをくすぐるというものである。

例えば、この企業では、労働基準法で定められた休暇の取得すら、一切認めていない。休暇が認められるのは、風邪をひいたなどの病欠時のみだ。この部分がムチである。

ただし、たまに仕事量が少なくないとき、1000円程度の昼食をおごる、3000円程度の夕食をおごり、早めに帰す……これがアメだという。A氏は、「日頃から厳しくしている分、たまにある『アメ』の部分で、社員は自分が認められていると思い込む。その心理につけ込むというわけ。これで社員は私の言うことを聞く」という。

引き続き、話を聞いてみよう。

もし社員が、労働基準監督署にでも告発したら?

A氏「そういうことを考えさせないために、仕事を増やし、拘束時間を長くし、にらみを利かせてプレッシャーをかけている。」

社員が定着しないための環境づくり

長くいる社員の方は、やはりその方が定年を迎えるその日まで、大事にされるおつもりですか?

A氏「それはない。年齢が高くなれば、それだけ給料も上げなければならない。長くてもせいぜい5年、できれば3年くらいで出て行ってもらいたい。」

誰しも、せっかく就職した会社を3年から5年で退職したいとは思わないでしょう?

A氏「それは居心地がいいところなら、それでもいい。しかしうちは、まだまだそんな居心地のいい会社にできる余裕もなければ、するつもりもない。3年から5年で自発的に辞めてもらう。」

皆さん、そのくらいの期間で都合よく辞めてくれるものですか?

A氏「1年目、2年目で、とにかくどやしつける。ただし、少し仕事を覚えてきたら褒める。この頃が一番使い勝手がいい。でも、仕事の振り分けで、うちに長居しても同業他社で通用しそうなスキルなどは絶対に身につけさせないようにしている。それに本人が気づいて、休暇も認めていないので、転職するにはうちを退職するしかないと気づかせるのです。もちろん自発的に退職するときには、盛大な送別会はする。それが退職金代わりになるというわけだ。」

古株で、仕事を覚えているような方の場合は、どうやって辞めさせるのですか?

A氏「仕事の面で無視する。使い勝手がよくなると、ある程度権限を与えて、新人の指導もさせているが、些細なきっかけでいいので、新人の前で叱りつけ、それまでの権限を取り上げる。これで普通は辞めていく。」

起業家として、そうした経営に思うところはありませんか?

A氏「まったくない。今は一人一人が経営者という時代だ。社会保険料まで、こちらが支払って、その恩恵を受けているのだから、それで十分だろう。嫌なら自分が経営者になればいい。企業経営とは、従業員をいかに効率よく働かせるかだ。もっともそれは社員のためではなく、私の会社のためだ。そこを履き違えてはいけない。」

さっさと見切りをつけるにしても

これでは、とても企業として発展するとは思えないのだが、ある経営コンサルタントは、こうした経営姿勢について「確かに発展はしない。しかし経営を維持するという面では、あながち間違いではない」という。

また、こうしたブラック企業、経営者の下で働いた経験のある人は、「少ないながらも貯金ができて、退職し、失業保険で食いつなぎつつ、再就職に向けた活動を行うと、労働基準監督署に告発しようという気もうせた」と話す。

もしブラック企業に入社してしまった場合、さっさと見切りをつけて退職したほうがよさそうだが、一歩間違えればドツボにハマる可能性があるという。ある労働基準監督官は、次のような本音を漏らす。 

「早期退職で、きちんと仕事をしていない……、ゆえに会社に迷惑をかけたなどの理由で給与の支払いを拒んだり、逆に違約金を支払えという企業もある。あまりに労働者側に立った労働基準監督行政を行い、企業を閉鎖、倒産に追い込むと、それはそれで問題となり、我々もそうしたことを嫌う傾向がある。どのような仕事でも、給料をもらえる仕事をしている以上、従業員側が耐えてもらいたいというのが本音」

IT技術者がいない。みずほ不安の「2020年問題」(2014年)

情報社会を支えるシステムエンジニア(SE)不足が深刻になってきた。数万人規模とされる人手不足は「2020年問題」とも呼ばれ、システム統合でこれ以上失敗が許されないみずほ銀行などを脅かす。クラウド時代の到来で、大量のシステムエンジニアが余剰人員になるといわれていたのに、なぜなのか。

「新人でもいいですから」

東京都内にオフィスを置く中堅ソフトウエア開発会社。経営幹部の1人は、ある取引先からの依頼に耳を疑った。

「技術は新人レベルでもいいので、とにかくシステムエンジニアを集めてほしい。仕事は、みずほ銀向けのシステム開発だ」

みずほ銀向けのシステム開発とは、基幹システムの統合作業のこと。みずほ銀は当初、2016年春の作業完了を目指していたが、作業に万全を期すため、2月になって計画を1年間ほど延期する方針を決めた。一見、開発スケジュールに余裕ができたようにみえるが、この幹部は心配している。

「『孫請け』クラスの分際で口にするのも恐れ多いが、本当にみずほ銀のプロジェクトが順調に進むか不安だ。みずほ銀の前に、人手不足が立ちふさがるのではないか」――。そんな不吉な予感がしたのだ。

みずほ銀の今回のシステム統合は、2013年7月の「旧みずほ銀行」と「旧みずほコーポレート銀行」の合併に伴い、両行の基幹システムを一緒にして全面的に刷新することが目的だ。そのシステム開発の規模は並外れて大きい。

総投資額は3000億円を優に上回り、システム開発業界で使われる「人月」という単位で開発規模を示すと、20万人月。人月とは、1人のシステムエンジニアが1カ月働く作業量を意味するが、同じメガバンクである三菱東京UFJ銀行のシステム統合時は11万人月だった。今回のみずほのシステム統合は、実に三菱東京の2倍近くの規模に達するのだ。

「3度目のミス」はないのに

みずほ銀は、今年の夏から秋にかけての開発ピーク時はシステムエンジニアを8000人も集めなければならない。あるみずほフィナンシャルグループ(FG)幹部は、打ち明ける。

富士通日立製作所などシステム大手には、数年単位でシステムエンジニアを確保してもらっている。しかし、この人数を集めるのには苦労しているかもしれない」

そもそも、みずほ銀のシステム統合はいわくつきだ。旧みずほ銀時代には、統合・再編直後の2002年4月、そして東日本大震災直後の2011年3月に大規模なシステム障害を起こす失態を演じた。

3年前のシステム障害では、ATMで現金が引き出せなくなったり、振り込みが遅れたりした。自力で現金をかきあつめた会社も多く、個人から企業まで「みずほ不信」が広がった。みずほ銀にとって「3度目のミス」はあってはならないのだ。

消えたシステムエンジニアたち

みずほFGで今回のシステム開発の陣頭指揮をとるシステム推進部部長の加藤朝史は、「基本的な設計は終えつつある。必要な追加の作業も見えてきた。客観的に作業量を見積もり、延期を判断した」という。過去の教訓を生かして万全を期す体制だが、システムエンジニア不足への懸念は消せない。

事実、システムエンジニアが足りないという事態は、「入札不調」という形で現実になりつつある。2013年7月。札幌市役所の情報システム担当幹部は、システム開発の入札結果を見て、あぜんとした。

「なぜ、どこの社も手を挙げない。このままでは、掛け声倒れになってしまうではないか」

札幌市は2016年を目標に住民記録や納税、国民保険などの行政サービスを支える情報システムを全面刷新する計画を進めてきた。ところが、応札企業が現れない案件が出てきたのだ。この幹部によると、NECや日立のようなシステム開発大手が地元のソフト会社と組んで応札するのがもっぱらだった。「1回目の入札は不調だったが、次はいつも通りに進むのではないか」と考えていたら、2度目の入札でも応札企業が出てこない。

3度目の入札でやっと応札企業が現れたが、その会社は、札幌市が古くから付き合ってきたシステム開発大手ではなく、今まで取引したことがない東京都内の中堅システム開発会社だった。

ある市役所幹部は「今まで名刺交換したりして少しでも知っているシステム会社にかたっぱしから電話をかけたんですよ。今回のシステム受注に興味がないか、と聞いて回ったのです」と明かす。実は、札幌市役所のシステム開発担当者が「応札企業探し」に奔走していたのだ。

関係者によると、札幌市役所は、この入札から、市が内々で決めている作業単価の基準額を2~3割引き上げたとされる。札幌市内のシステムエンジニアの作業単価は東京など首都圏に比べて安かったが、「3~4年前に定めた単価だと応札企業が出てこない」という現実を知ったからだ。

「彼らに仕事を受ける余裕はない」

札幌市役所が市内のシステムエンジニア事情について調べたところ、「彼らは東京から来る単価の高い仕事に集中していた。我々の仕事を受ける余裕はなかったことがわかった」(札幌市役所幹部)という。

システムエンジニア不足は、みずほ銀など大口ユーザーが集中する東京だけの現象ではない。全国各地で、システムエンジニアの争奪戦が始まろうとしているのだ。なぜ、これほどの人手不足が起きているのか。

景気の回復によるIT投資マインドの復活だけが理由ではない。最大の原因は、システム業界の一部でささやかれる「2020年問題」だ。

最初のピークは2016年

社会保障と税の共通番号(マイナンバー)の運用開始に合わせた政府や地方自治体のシステム更新、日本取引所グループのデリバティブ(金融派生商品)売買システム刷新、株式上場を目指す日本郵政の大規模システム投資……。そして、みずほ銀のシステム統合。目先では、2016年ごろの稼働を目標にした数千億円規模の大型システム開発案件が目白押しになっている。

マイナンバー導入に向けた開発業務の集中で、自治体向けだけでも7万~8万人が不足する。2016年以降も大型開発案件が引きも切らず、システムエンジニアが足りない事態が東京五輪開催の年、2020年ごろまで続く」――。業界内では、こんな強気の見方が出てきているのだ。

システム開発業界は、富士通やNEC、日立、NTTデータ日本IBMといったシステム大手が頂点に立つ産業ピラミッドをつくってきた。中小のソフト会社が「下請け」「孫請け」といった具合に重層的にかかわってシステムをつくることから、富士通などシステム大手は「ITゼネコン」とも呼ばれている。

その業界ピラミッドを大きく揺さぶったのが、2008年リーマン・ショック。企業などのシステム投資は一気に冷え込んだ。業界内では、「リーマン後、徐々に受注が回復してきても、顧客に足元をみられたためか、作業単価は、大手で3~5%、中堅で1割、零細は2割以上下がった。中には、半分にされたソフト会社もあった」と言われていた。

さらにクラウドが企業社会に浸透すれば、企業は専用の情報システムを使う必要がなくなり、「専用システムを開発するシステムエンジニアは大量に余る」というのが通説だった。事実、富士通は2年前から、「従来型の情報システム市場は、最悪の場合、4分の1まで縮むかもしれない」(当時の役員)と危機感をあらわにして、グループ3万人のシステムエンジニアの職務転換を急いでいた。

しかし、事態は違う方向に進んでいる。経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によると、情報システム企業が「システムエンジニアが不足している」と考えている割合は2013年10~11月時点で82.2%。前年より10.2ポイント上昇し、リーマン前の75.6%を初めて上回った。

富士通やNTTデータなどシステム大手の受注残高は過去最大規模。NTTデータの場合、2013年4~12月の累計で前年同期より1804億円多い1兆993億円。一部のシステム開発会社は発注者側に対し、強気な姿勢をとりはじめている。顧客側からすると、計画通りにシステムを完成させるには値上げ要求をのまざるを得ないからだ。

「我が世の春」でも尽きない心配

ある独立系ソフト会社の専務は、「契約済みの仕事は価格を見直しにくいが、新規案件であれば1割の値上げをお願いしている」と打ち明ける。

ならば、今は「我が世の春」を楽しんでいるのではないか――。日本を代表するITゼネコンもシステム開発の現場にいるシステムエンジニアたちも、浮かれていてもおかしくないが、実は彼らは頭を悩ませている。

「2020年が過ぎると、やっぱり、我々は切り捨てられてしまうのではないか。今は、我々の『枯れた技術』が求められているが、もう通用しなくなるだろうから」。あるベテランのシステムエンジニアは、こんな心配を抱いている。

目先で精いっぱいの「IT宮大工」

みずほ銀や日本郵政などが開発中の情報システムは、今のところ、クラウドをはじめとする最先端のコンピューター技術を使うことは少ない。大量に動員されるシステムエンジニアの多くは、昔ながらの人海戦術と技術で開発作業を淡々とこなすだけだ。

しかし、それでは、システムエンジニアたちがクラウドなどの最新技術を学ぶチャンスを逃してしまう。製造業や流通・サービス業など一般企業は、「絶対に止まらないこと」を優先する金融業界や政府と違う。費用対効果を重視するため、低コストで使えるクラウド技術の採用に貪欲だ。

このままでは、今は引く手あまたのシステムエンジニアたちが2020年には「浦島太郎」のごとく、技術進歩の流れに置いていかれてしまう恐れがある。NTTデータで金融機関向けシステム開発を担当する経営幹部は、危機感を募らせる。

「彼らはいわば、IT業界の『宮大工』。注文住宅のように、顧客が求める仕様通りにシステムをつくる技術にたけている。しかし、プレハブ住宅のように、クラウド技術を使って効率良くシステムを動かす時代が到来している。クラウドの知識を身につける教育機会をつくっているが、現場のシステムエンジニアたちは、目の前の作業をこなすことで精いっぱいなんだよな」

ITゼネコンやシステムエンジニアたちにとって、宴の後には「崖」が待ち構えている。

IT土方川柳

  • 帰ろうと思った途端にバグがでる
  • セキュリティ守るつもりが壊された
  • 飲み会の 乾杯直後に バグで帰社
  • もうだめぽもうもうだめぽもうだめぽ
  • 残業の 後のビールは 美味しいな
  • 飲み会の 金だけ払って 残業す
  • コンパイル 通らないので コメント化
  • 日曜日 出勤してたら あら月曜
  • 出勤したら、上司のFBにまず、イイネ!
  • 週末に 自宅に帰れた ためしがない
  • VSS ロックしたまま 夏休み
  • ドキュメント 後でいいやが 首を絞め
  • 設計書 「最新版」は どれも古い
  • コーディング レビューで叩かれ 深残だ
  • おかしいな 契約したのに 人いない
  • 仕様書は どこにもないよ ほらソース
  • 「頑張れよ」 社長の差し入れ ユンケルだ
  • エクセルの セル色の意味 皆知らぬ
  • 設計者 直すか死ぬか 選ばせる
  • ぐらばくさん ああぐらばくさん ぐらばくさん
  • 帰りたい 言ってるうちが 華だった
  • 金曜日 明日は休みだ 朝まで労働
  • その操作 普通しません やめなさい #IT社畜川柳
  • やりましょうその一言で殺気立つ
  • 安くしろ 変更飲み込め 早くしろ
  • 管理とは 丸投げ、無茶振り 無責任
  • 今日中で あと五分で 何しろと
  • 了解した ところで過去の 実績は?
  • 伝書鳩 お前に営業 任せたい
  • 仕様書が 毎日変更 もうダメぽ
  • 「まだ動く」「ちょっと直して」「なんとかしろ」
  • あいふぉーんいつ出るいつ出るうるせーよ

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