被害者

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被害者ひがいしゃ)とは、刑事法学(刑法学、刑事訴訟法学)では、「犯罪により害を被つた者」(刑事訴訟法230条)をいう。

なお、交通事故における場面では、けがをした側をさし、けがをさせた方を加害者と用いるので、けがをした側の過失がけがをさせた場合よりも過失が大きくても、けがをした側をあくまで「被害者」と呼ぶ。

また、「事件事故等の人災などの被害にあった者」を被害者と呼ぶが、そちらについては被災者を参照。

被害者の権利

親告罪における権利(告訴権)

告訴権とは、犯罪の被害者が、加害者に対する処罰を求める権利である。

犯罪の中には、裁判を行うにあたって被害者の告訴が必要なものがある(親告罪という)。これらの犯罪は、「事件を公にすることで被害者の不利益につながる恐れがあるもの(例:強姦罪)」、「軽微な被害が想定されているもの(例:器物損壊罪)」などがあり、それらについては被害者が自己の都合で加害者に対する処罰を求めるかどうかを決めて良いことになっている。親告罪では、被害者による告訴権の行使が必要である。

親告罪以外についても、被害者は告訴をすることができる(親告罪以外では、告訴がなくても検察が裁判を起こすことは可能)。この場合、被害者の告訴があれば、裁判とするかどうかの判断や判決の量刑などに影響する場合がある。

訴訟上の便宜などの諸権利

被害者には、前述の告訴権(同条)のほか、公判手続の傍聴申出権(犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律2条)、公判記録の閲覧及び謄写申出権(同法3条)、意見陳述申出権(刑事訴訟法292条の2)などの権利が保障されている。また、検察官の判断(起訴・不起訴の別など)、また不起訴の場合にはその理由について、通知・告知を受ける知を受ける権利がある。

被害者の承諾

なお、刑法上、被害者の承諾があることによって、犯罪とはならなくなるものがある。たとえば、医師による手術行為は外形上傷害罪の構成要件に該当するが、被害者の同意がある場合には、傷害罪となることはない(事例によっては推定的同意が認められるかどうか問題になる)。殺人罪も、被害者の同意があると成立しないが、一方で同意殺人罪が成立する。13歳未満に対する強姦罪や強制わいせつ罪は被害者の承諾があっても犯罪の成立は阻却されない。なお、判例保険金詐欺指つめなどの事例について傷害罪の成立が問題となったケースで、法益の侵害について被害者の同意があるにも関わらず、傷害罪の成立を肯定した。刑法学上の議論の詳細は被害者の承諾社会的相当性の項目を参照。

損害賠償請求権

民法上の不法行為(709条)の成立要件を満たす場合や、加害者の行為が債務不履行に該当する場合は、それぞれ損害賠償請求権が被害者に成立する。ただ、これらは金銭賠償が原則であり、かつ加害者側の資力に依存するものなので、被害の性質や多寡によっては十分でないことが多い。

被害者の救済

被害者のメンタルケア

犯罪被害者のメンタルケアなどに関しては、十分とはいえないものの、徐々に制度が整えられつつある。

被害者の経済的救済

日本国内(日本船舶、日本航空機内を含む)で人の生命又は身体を害する罪に当たる行為(緊急避難や責任能力を有しない者によるものを含む)で死亡、重傷病又は障害を被った者またはその遺族に対し犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律に基づく、犯罪被害者等給付金が支給される場合がある。現在、遺族給付金で最高1573万円、障害給付金で最高1849.2万円が支給される。もっとも、労災などの公的給付や損害賠償を受け取った場合は、受け取った価額の限度で減額される場合があり、実際の支給額はこれより更に下回るのが通常で遺族給付金の平均受給額は約400万円程度である。

全国犯罪被害者の会

「犯罪被害者の権利確立」「被害回復制度の確立」「被害者の支援」を柱に、2000年1月23日第1回シンポジウム「犯罪被害者は訴える」を通して結成された。 代表幹事は弁護士であり、自らも妻を殺害された岡村勲

被害者の人権保護

「被害者に対する人権保護」については、いろいろと社会的議論がある。

加害者の人権保護とのバランス

しばしば問題視されてきたのが「加害者に対する人権保護」とのバランスである。たとえば犯罪加害者、特に未成年者に対しては顕名報道が避けられる方向になってきているにもかかわらず(未成年犯罪者については原則禁止)、被害者については実名報道が原則とされてきたことなどである。

なお、このケースでは「被害者についても実名報道を避け、人権侵害につながる恐れを抑制すべきである」という主張は少なく、加害者についての実名報道を維持したいという意図の下に被害者の人権が利用されているケースが多く見られることに注意すべきである。

人はいつ被害者や加害者になるのか分からない。そのことに留意する必要がある。

近年、死刑判決が増加しているのは、法廷で遺族の意見陳述が認められたことにより裁判官も遺族感情を無視できなくなったからだとする指摘がある[1]。また、刑事裁判はあくまでも法に則り司法が量刑を与えるものであり、遺族・被害者のための報復という考えは近代民主主義国家の刑事裁判としては受容できないという説も根強い。

被害者の氏名情報の扱い

最近では、警察発表で被害者の氏名が伏せられることも増えてきている。2005年には、大規模な鉄道事故のケースで、警察側がマスメディアへの発表に同意した被害者の氏名のみを発表したというケースがあり、改めて大きな議論を巻き起こした[2]。このケースでは、マスメディアの側が猛烈に反発し全面公開を要求した(が、このケースでは最後まで拒否されている)。

こういった混乱を受けて、2005年10月には日本新聞協会が「(氏名を報じるかどうかは報道機関が判断するので)警察は被害者の氏名を報道機関に対しては開示すべきである」との意見書を内閣府に提出した。

しかし、「未成年者犯罪などについて『報道の自由』を掲げて氏名報道を強行する報道機関がある」「大きな事件では被害者や被害者家族・遺族に対する取材競争が加熱することが珍しくない」「被害者をことさら貶めるような報道がなされる場合がある」といった問題点がこれまでにも指摘されてきた。また、警察官検察官、取材した記者の実名が報道されることは少なく、報道機関内の不祥事について、報道機関自らが情報を秘匿するといったケースも少なからずあり、個人情報の開示を巡る判断を報道機関に任せることに不安の声もある。こういった理由から、「国民の知る権利を代表するもの」として、あるいは「権力のチェック機関」としての報道機関の信頼性には疑問を提示する声も多く、報道機関による警察に対する氏名開示要求は必ずしも社会的な同意を受けているものとは言えない。

被害者の個人特定が全く不可能になると、警察発表などの内容を報道機関が検証することも不可能になり、それはそれで社会的な不利益につながる公算も高い。今後の社会的合意の形成が注目される。

脚注

  1. 死刑宣告、過去最多45人 世論が厳罰化後押し産経新聞、2006年12月30日。
  2. 個人情報保護法の全面施行の直後だったということもあり、被害者の氏名情報の扱いについて警察や病院など多方面に迷いが見られたことも、混乱を加速した。

関連項目

外部リンク


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