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テンプレート:Infobox 化合物 (みず)は、化学的には化学式 H2O で表される水素酸素化合物

常温常圧では無味、無臭、ごくわずかに青緑色を呈す透明液体である。地球表面、特に海洋に豊富に存在する。生物の生存、日常生活をはじめ、工業や医療などに不可欠であり、人類にとって最も身近な物質の一つである。人体の60%から70%程度が水である。この様に身近である水だが、宇宙全体から見ると液体の水として存在している量は少ない。

固体、液体は水、気体水蒸気と呼ばれる。温度の高い液体の水を(ゆ)と言い、特に温度の高いものを熱湯(ねっとう)と言う。理・工学的な分野では熱水(ねっすい)という語も用いられる。

物理的性質[編集]

テンプレート:right 常温大気圧下で僅かに青緑色を呈す透明な液体。1気圧の大気圧下での沸点は約100[[摂氏|テンプレート:℃]](より正確には99.974テンプレート:℃)、融点は0テンプレート:℃(実際には99.974テンプレート:℃以下の水蒸気も、0テンプレート:℃以下の水も存在する)。3.98テンプレート:℃のとき最も比重が大きく、固体液体より比重が小さい。そのため固体であるは液体の水に浮き、氷に圧力をかけると融ける。これは多くの他の分子とは異なる水の特性であり、水分子間での水素結合によるものである。ヒドロキシル基を2つ持ち合わせている。液体の状態では 10−7 (mol/L) (25テンプレート:℃) が電離し、水素イオン(正確にはオキソニウムイオン)と水酸化物イオンとなっている。一般に無色透明と言われる場合が多いが実際にはこの電離したイオンの関係でごく僅かな青緑色を呈す。

沸点融点が100テンプレート:℃と0テンプレート:℃というきりのいい数値であるのは、水の性質を基準として摂氏での温度の目盛りが定義されたためである。また、4テンプレート:℃のときの1cm3あたりの質量を基準に1g(グラム)を定義したり、1gの水の温度を1K(1テンプレート:℃の温度差)上げるのに必要な熱量を1cal(カロリー)と定めたりするなど、単位の基準に使われることが多かったが、不純物の存在による不正確さに加え、たとえば 1gを求める場合には、体積圧力温度を規定しないと正しい重量が得られないという本質的な精度の問題があるため(キログラムを参照)、近年では一意に求めることができる水の三重点が1Kの基準となるのを除けば、基準としての役割はほとんどなくなっている。

水は比熱容量が非常に大きいことでも知られる。反磁性の性質を示す代表的な物質でもある。

また、水はマイクロ波なども吸収しやすく、電子レンジはそれを利用して加熱をしている。

亜臨界水・超臨界水[編集]

水は22.1MPaの圧力をかけると374テンプレート:℃ (647K) まで液体の状態を保つ。これを亜臨界水という。これ以上の圧力、温度の状態の水を超臨界水という。その性質は通常の状態と異なりイオン積が高く通常の水より水酸化物イオンの濃度が高くなる。また比誘電率が低い。その性質を利用のため研究されている。

過冷却水[編集]

融点(1気圧では摂氏0度)以下でも凍っていない、過冷却状態の液体の水のこと。不安定であり、振動などの物理的ショックにより結晶化を開始して転移する。過冷却水の入っている容器にビー玉などを落とすと、ビー玉が底に着く前に全体が氷になる。

アモルファス氷[編集]

非結晶の氷のこと。通常の氷は結晶であるが、液体からの急冷、結晶氷を加圧、あるいは気相からの蒸着などの方法により、非結晶の氷が生成される。密度の違う2つの状態が存在し、それぞれ、高密度アモルファス氷、低密度アモルファス氷という。

化学的性質[編集]

水素と酸素の電気陰性度の違いから、水分子においては酸素原子側が電気的に負となり、水分子の形から電気双極子を形成している。さらに共有結合に使われていない孤立電子対が2つ存在する。以上から水の比誘電率は 79.87 (20 ℃) と高い。このため塩化ナトリウムなどのイオン結晶の結合を破壊し、すぐれた溶媒として働く。さらに水素-酸素結合は水素結合を形成しやすく、特に電気陰性度の高く結合に利用できる電子軌道が余っている原子とは容易に水素結合を作りやすい。したがって、などイオン性ではない分子に対する溶媒ともなる。このため、ベンゼンなどの炭化水素はイオン性でもなく、水素結合を形成しないため、水には溶解せず分離してしまう。

以上、水はほかの物質を溶かしたり、溶けた物質のイオン化を促進する性質をもつことが分かる。このため溶媒としてよく使われる。また、多くの化学反応触媒としても利用される。 天然の水には、僅かに重水(D2O、多量に摂取すると生物には有害)が含まれている。水素の同位元素である重水素からなるものである。重水は、化学反応の標識によく使われる。

生物と水[編集]

テンプレート:right すべての既知の生命体にとって、水は不可欠な物質である。

生物体を構成する物質で、最も多くを占めるのが水である。細胞質で最も多い物質でもあり、細胞内の物質代謝の媒体としても使用されている。通常、質量にして生物体の70%–80%が水によって占められている。生きている細胞には(理想的な溶媒である)水が多く含まれており、生命現象を司る化学反応の場を提供し、また水そのものが種々の化学反応の基質となっている。体液として、体内の物質輸送や分泌物、粘膜に用いられ、また高分子鎖とゲル化することで体を支える構造体やレンズにも利用されている。クマムシのように厳しい環境にも耐えられる生物は、体内の水分を放出し、不活性な状態をつくり出すことができる。

なお、生物は太古の海で誕生したと考えられている。生物の化学組成海水の組成がにていることもその根拠の一つである。従って、水中生活が生物の原始的な姿であると見てよい。

陸上のように、常に水につかっていない環境では、生物にとって最も重要な問題の一つが水の確保である。陸上の無脊椎動物では、周囲が湿っていなければ活動できないものも多い。陸上生物に見られる進化的形態の多くが水の確保や自由水のない環境への適応である。クマムシの場合も、頻繁に乾燥にさらされる環境への適応として、休眠の能力が発達したと考えられている。

特に人体においては、体重の60%を占める水のうち45%までが、細胞内に封じ込められた水で、残り15%が、血液リンパ液など細胞の外にある水である。この細胞内液細胞外液をあわせたものを体液と呼び、この体液が生命の維持、活動に重要な役割を果たす。

一日に排出される水の量は、静かに横たわっている成人男性で2,300mLであり、内訳としては尿1,200mL、200mL、不感蒸泄900mLである。1日に必要な水の量は当然2,300mLである。一般に、飲料水から1,200mL、食物800mL、代謝物300mLとして摂取される。なお、不感蒸泄とは呼気に含まれる水蒸気として体外に吐き出されたり、皮膚表面から感知できない程度に分泌されるのことである。

水素結合による利点[編集]

水分子間における水素結合を生物は様々な形で利用し、またその恩恵を受けている。

  • 生体に不可欠な構成要素であるタンパク質が必要な立体構造を作る際(フォールディング)に、各アミノ酸同士にはたらく水分子を仲立ちとした水素結合が重要な役割を演ずる。
  • 生物環境という立場から見れば、水はその(水素結合に起因する)比熱が大きいことによって温度を安定させる緩衝の意味合いが大きく、恒常性の維持に貢献していると言える。
  • 低温の固体液体より上部にくることは、湖沼を完全凍結しにくくし、生物に生存のチャンスを与えている。液体である4℃の状態で最も密度が大きくなるという性質は水素結合の性質に起因している。
  • は非常に効率よく体温を下げる機能をもつ。水の蒸発潜熱が大きいのは水素結合が強いことに起因している。

人体における水の過不足[編集]

水の摂取量には適量というものがある。

脱水症[編集]

体内の水分量が不足した状態を医学的には脱水と呼ぶ。水分喪失量に対して水分摂取量が不足することによって起こる。水分摂取不足、あるいは水分喪失過剰、あるいは水分摂取不足と水分喪失過剰の同時進行によって起きる。具体的には、高温の環境、重作業、激しい運動発熱下痢嘔吐などが原因となって起きる。

水中毒[編集]

人体が過剰な水分を投与された場合、細胞外液浸透圧が異常に下がり、低ナトリウム血症によって悪心、頭痛、間代性痙攣意識障害等の症状を引き起こす。これを水中毒と言い、輸液ミス、心因性多飲、SIADHなどの結果としてみられる。なお致死量は体重65kgの人で10–30リットル/日である。


水の分布[編集]

テンプレート:right

地球上の水[編集]

地球上には多くの水が存在しており、生物の生育や循環に重要な役割を持っている。気象学海洋学などの地球科学生態学における大きな要因の一つである。水蒸気は最大の温室効果ガスでもある[1]

その97%が海水として存在し、淡水は残り3%にすぎない。そのほとんどが氷河氷山として存在している。

位置 淡水湖 河川 地下水 地下水 土壌 氷河 大気 塩水湖 海洋
存在比 (%) 0.009 0.0001 0.31 0.31 0.005 2.15 0.001 0.008 97.2

このなかで、淡水湖 河川水 地下水浅が、利用可能な水で、総量の1%未満である。

地球における継続的な水の循環は水循環と呼ばれている。太陽エネルギーを主因として、固相液相気相間で相互に状態を変化させながら、蒸発降水地表流土壌への浸透などを経て、地球上を絶えず循環している。

太陽系の水[編集]

太陽系惑星および衛星の表面に存在する水のほとんどはまたは水蒸気であり、地球以外で液体の水が存在する場所は少ない。相図からわかるように、液体の水が存在できる温度範囲は高圧ほど広くなる。逆に、火星のように気圧の低い環境では、液体の水は安定に存在することはできない。

火星の表面にはかつて液体の水があったことが判明している。

木星衛星エウロパは、内部に液体の水からなる海があるのではないかと言われている。

太陽系外の水[編集]

2007年4月に発見された太陽系外惑星グリーゼ581cは、その質量と恒星からの距離のため、表面が地球のように岩山や海に覆われている可能性もある。

水の用途[編集]

家庭での水の使用状況[編集]

一例として東京の家庭での状況を挙げると、1日で1人あたり242Lの水を使っている(2005年現在、東京都水道局調べ)。家庭での水の使用量のうち、28%がトイレ、24%が風呂、23%が炊事、17%が洗濯となっている(2002年、東京都水道局調べ)。[2]

水の供給[編集]

水の利用は都市生活の維持にとって重要なため、古代から水道が建設された(上水道下水道)。産業利用を目的とした水利は、用水路と呼ばれる(農業用水工業用水)。

水と哲学[編集]

古代ギリシアの哲学者タレスは、万物の根源アルケー(現代でいうところの元素のようなものだが、必ずしも物質的なものではない)は水であると考えた。エンペドクレスは、水、空気の4つのリゾーマタ(四大元素)からすべての物質が構成されるとする、いわゆる四元素説を唱えた。これはアリストテレスに継承された。

東洋においても、万物は・水の5種類の元素から成るという五行説が唱えられている。

水(氷)の研究史(近代以降の主要なもの)[編集]

  • 17世紀初頭 ベルギーのファン・ヘルモントは植物成長に関する実験により、水を元素と結論づけた。あらかじめ重量を測定した鉢植えに水だけを与え、4年後に重量を測定すると重量が増加していた。すなわち水元素が木元素に変換したことになる。ヘルモントはガスという用語を作り出している。ビールの発酵、石炭の燃焼、炭酸塩から発生するガスが全て同じものであり、命名もしていたが、彼自身の実験と彼のガスの関係には気づいていなかった。
  • 1765年 イギリスのキャベンディッシュ、水を材料に熱の研究を行ない、蒸発熱や潜熱を測定している。
  • 1766年 キャベンディッシュ、「人工空気の実験を含む三論文」を発表。第一論文で「可燃性空気」すなわち水素の発見を発表。ただし、水素の燃焼物が何であるかを理解していなかった。
  • 1781年 酸素の発見者の一人イギリスのプリーストリーは水素の燃焼物が水であることを見いだし、キャベンディッシュに確認を求める。
  • 1784年 キャベンディッシュが「空気に関する諸実験」を発表。水の組成を確認する実験について記述されている。実験には2年を要した。水素と酸素を電気火花によって反応させると大量の反応熱を出すため、生成物にどうしても窒素の酸化物である硝酸が混入してしまうためであった。彼の論文では水素と酸素を可燃性空気と脱フロギストン空気としているものの、水素2容積と酸素1容積から水が生成することを確認している。フロギストンによらない説明を最初に与えたのは酸素という名を命名したラボアジェであった。
  • 1785年 ラボアジェが赤熱した鉄管に水を通すと水素が発生することを示し、水素、酸素こそが元素であって、水は化合物であることを最終的に確認した。
  • 1791年 イタリアのボルタが酸素と水素が一定の比率で化合する性質を利用し、逆にこれらの気体の分量を測定するユージオメーターを開発した。
  • 1800年 ボルタ、化学反応による電流の発生に成功。「ボルタの電堆」と呼ばれる(電池)。
  • 1801年 イギリスのウィリアム・ニコルソン、「ボルタの電堆」を用いて、初めて水を電気分解した。陰極に水素が2容積、陽極に酸素が1容積発生することを示した。
  • 1920年 この頃までに水素結合の概念が提唱される。
  • 1933年 バナールが、水のX線構造解析を行う。
  • 1935年 ポーリング、氷の残余エントロピーの理論。
  • 1936年 中谷宇吉郎、雪の結晶を人工的に世界で初めて作成する。
  • 1958年 アイゲン、水中のプロトン移動に関するモデルを提唱する。
  • 1971年 ラーマンにより、水の分子動力学法によるシミュレーションが行われる。
  • 1971年 ペイジが、水の中性子による構造解析を行う。
  • 1994年 三島修が、 2 つのアモルファス氷の間(低密度⇔高密度)の一次相転移を発見。

水と芸術[編集]

水は人類にとって最も身近で重要なものであり、かつ様々な態様を見せることから、水をモチーフとした数々の芸術作品が生み出されている。

文学[編集]

音楽[編集]

別称[編集]

  • IUPAC系統名オキシダン (oxidane) であるがほとんど用いられない。(→記事「水素化物」参照)。ほか、「一酸化二水素」「酸化水素」「水酸」「水酸化水素」といった呼び方をすることも可能である。
  • 水をネタに、感情的な環境保護論を揶揄するジョークがある。(→記事「DHMO」(Dihydrogen Monoxide)を参照)

代表的な慣用句[編集]

  • 水掛け論 - に水がほしい双方が水を掛け合ってまで争うところからきているといわれる
  • 湯水のように(ごとく) - 日本ではかつて「水と安全はタダ」など言われ、水は非常に安価または無料の代名詞であったため、躊躇なく使うことを言い,通常は無駄遣いや乱費の表現として用いられる。
  • 水商売または、お水 - 飲食業、あるいは風俗業の別称。一日の客数が安定しない(水物)から、もしくは酒の水割り用の水道水に値段を付ける(金を取る)ことから。
  • 水に流す - 汚れ物は水に溶かして流れさるに任せるのが古来の流儀である。実際に多くの汚物は水中における自然の浄化作用とその人工的応用である汚水処理によって処理される。

他にも、世間や市場に飛び交うもの(貨幣情報など)を水にたとえて、「洪水のような」とか「氾濫する」とかいう表現がされることがある。

参考文献と脚注[編集]

  1. Kielh, J. T.; Trenberth, K. E. (1997). "Earth's annual global mean energy budget." Bull. Am. Meteorol. Soc. 78: 197–298 によると、温室効果のうち60%が水蒸気に由来する。第2位が二酸化炭素 (26%) である。
  2. 東京都水道局

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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